旅行雑記
(1)三国は日本で言えば広島県、山口県、島根県の集合体のようなもので言葉は方言の差かなと思いつつ、現地を訪れたがこれが大間違い。三国はそれぞれ独自の言葉、文化、宗教、民族で成り立っていることに、先ず驚いた。言葉の類似性もない。三国の人々が意思の疎通を計るためにはロシア語かドイツ語を話さなければならない。三国が寄って立つ歴史的背景を知る必要があることを痛感した。
(2)食べ物は三国とも基本的には肉とジャガイモとライ麦パン。これらの素材に季節の野菜やキノコが加わって素朴なヨーロッパの田舎料理といった感じである。例によって量が日本人の胃袋には重すぎる。体重増を気にしながら10日間飽きずにおいしく食べた。
(3)飲み物は三国ともビールがうまいことで有名。日本のビールより濃厚でコクがある。中瓶が日本円で30円ぐらい。この他、三国特有の度数50〜70%のウヲッカ。何回か試飲したが半合も飲めば桃源郷に浸れる。そういえばソ連や北欧にはアル中が多いことを思い出した。
(4)三国とも花と音楽を愛することで知られている。町中いたる所に花壇が据えられ、民家の窓辺には花一杯のプランターが吊るされ、実に美しい。ラトヴィアでは古い教会で世界最大規模のパイプオルガンの荘厳な演奏を、また、正装で着飾った現地観客と共にオペラを鑑賞した。音楽が民衆と共にある感じがした。
(5)三国とも通貨が違うので、国境越えの度に両替を迫られる。無駄が出ないようにその国での支出額を想定して両替するのがコツ。三国とも来年からEUに加盟、通貨はユーロ貨に統一されるので両替のわずらしさは無くなる。
(6)リストニアでは西海岸に「ニダ」という名前の保養地があり、そこに2泊した。約100kmにわたる砂丘の岬に在る町である。砂丘には古来、松林が群生し、松のヤニが何千年もにわたり化石化した琥珀(コハク)の産地として有名な町である。世界の生産量の90%はここで採れるとのことである。海に浸かり、布ですくうとコンペトウ大の琥珀が採れる。琥珀すくいに大いに興じた。因みに、値段は日本の約1/10である。
(7)リトアニアの第2の都市カウナス市にある旧日本領事館、現在の「杉原記念館」を訪ねた。第2次世界大戦初期、杉原千畝(チウネ)領事代理が日本政府に無断でナチス迫害を恐れたユダヤ人3000人に他国脱出のための日本通過ヴィザを発行した館である。これにより日本を経由して第3国に渡ることのできたユダヤ人は6000人を超えると言われる。救われたユダヤ人の子孫が毎年多数訪れるそうである。現在、ユダヤ人が館長を勤め、訪問客に杉原氏の功績をたたえる姿に感動した。
(8)KGB(旧ソ連国家保安委員会)による現地住民迫害施設やナチスのユダヤ人迫害施設もそのまま公開されている。案内者の説明を聞き、人権迫害の悲惨さに身の毛がよだつ思いもした。
(9)中身の濃い旅行であった。訪問地の思い出を辿りながら、参考本を片手にヨーロッパの歴史の一端を今一度紐解いてみたいと思っている。



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