平成13年10月〜15年3月








                 組藤 美智子

 いつかは行ってみたいと思っていた四国88ケ所めぐり。
 平成8年に主人を亡くし90歳を越えた義母との二人暮らし。だんだん留
守番が心配で出にくくなるし、でも自分も体力があるうちに行きたいしとど
うしたものかと思案していたら、ふと目にとまった新聞のチラシ『日帰りで
行くお遍路の旅』 これなら行けるかも? さっそく義母に相談したら快く
「行ってきなさい」と云われ、友達にも声をかけたら「私も」「わたしも」
と思いがけず7人も同意され20人あまりのツアーの3分の1を占めるにぎ
やかな旅になった。
 最近はテレビでも放映され一種の遍路ブームのようになっていて、目的は
人それぞれで、よく『心の安らぎを求めて、あるいは自分と向き合ってみた
い』とか云われていますが、私は主人や両親の供養という大義名分の元に毎
月小旅行が楽しめるという信仰半分、観光半分と言った気持ちからでした。
ツアーの仲間もそれぞれ愛する人を亡くした悲しみを抱えている人、病気と
闘っている人、中でも足の不自由な老夫婦が杖をつきながら添乗員さんに介
添えしてもらってお参りされ、最後まで満願されたのにはみな拍手で一緒に
喜びました。
 「発心の道場」阿波の国徳島県から始まり「修行の道場」土佐の国の高知
へ。さらに「菩提の道場」伊予、愛媛から「涅槃の道場」讃岐国の香川をめ
ぐって満願成就となります。
 徳島と香川は日帰りが出来ましたが高知と愛媛は1泊で、日帰り10回、
1泊6回と瀬戸大橋としまなみ街道を利用して長いバス旅行を重ねました。
瀬戸大橋で見る夕日の沈む眺めはすばらしく、無事お参りできた満足感を味
わいながら帰途につきました。
 1年半近くも四国通いをしたので、四季折々のお花になごまされ、いろい
ろな種類のおいしいみかんを味わったり、室戸岬、足摺岬から見る青い空と
太平洋の大海原に『空海』という名前の所以に納得したり、桂浜で童心にか
えってきれいな石を拾ったり、金毘羅さんを息を切らしながら奥の院までお
参りしたり、四万十川の川くだり等々お参り以外の楽しみもいろいろいい思
い出になりました。

足摺岬にて右が私

桂浜にて中央私

 一番寺の霊山寺で納経用品を購入し、お参りの作法(山門や仁王門で一礼
して、水屋で手を洗い、本堂でお札を納め、ろうそく、線香、お賽銭をあげ、
合掌して般若心経をあげる。大師堂も同じように参拝する)を教わりました。
はじめは慣れないのでぎこちなく、時間もかかるし、もたついいましたが回
を重ねるうちにスムースにお参りできるようになった。
 時々大きなリュックを背負った歩き遍路に出会う。一周すると約1400
`、健脚の人で40日から50日はかかるという。難所もロープウエーが出
来たり、ケーブルカーに乗ったりとずいぶん歩きやすくなったといわれるが
それでも大変なことだ。
 昔の巡礼は死を覚悟して出かけたと聞く。行き倒れも多く巡礼の衣装は頭
にかぶる笠は土葬のふたで、杖は卒塔婆で住所と名前が書いてある。
 88ヶ寺のうち印象に残ったのは、12番『焼山寺』ここは標高800m
の山上にあり遍路ころがしといわれた難所だが、今では近くまで車が入る。
こんなところにこんな大きいお寺をしかも動力のない時代にどうやって作っ
たのだろうと不思議な気がする。
 18番『恩山寺』ここは弘法大師が母君のために女人解禁の祈願をしたと
いう親孝行のお寺。私も両親の戒名を唱えながら菩提を弔う。
 21番太龍寺も標高600mの山上で難所のひとつだったけど平成4年に
ロープウエイが開通し、楽に参拝出来た。途中切り立った岩壁の上に大師の
坐像も見え、これもどうやってあんなところにと感心する。
 24番『最御崎寺(ほつみさきじ)』ここから高知県、室戸岬の頂上に立
つお寺。荒磯修行の場で最初に悟りを開いたといわれる御厨人窟(みくろど)
という洞窟があった。
 35番清滝寺では巨大な厄除け薬師如来像がありその台座の真っ暗な中を
「おんころころせんだりまとうぎそわか」と真言を唱えながら戒壇めぐりを
した。
 40番『観自在寺』ここから愛媛県。1番札所から最も遠い場所にあり
"四国霊場の裏関所"いわれ、200年前に作られた山門もあり寺宝もたくさ
んある立派なお寺。

同行二人
 60番『横峰寺』標高1982m西日本最高峰石鎚山の中腹にたたずむお 寺。バスの駐車場から狭い山道を息を切らしながら登った。  66番『雲辺寺』ここから香川県。標高930m、香川県と徳島県をまた ぐ四国山脈に位置し、88ケ所中一番高いところにありしばしば霧に包まれ お寺の名前の所以とか。ここもロープウエーで7分ほど。75番『善通寺』 は弘法大師誕生の地、京都の東寺、高野山と共にお大師3大霊場のひとつとい われる。さすが広大な敷地に五重塔、金堂が建ち並び四国一の立派なお寺。 御影堂の地下は戒壇めぐりが出来、真っ暗闇の中を手探りでくねくねと進む と中ほどに大師生誕の祭壇の明かりが見え、ほっとする。罪障消滅、祈願成 就するといわれるが・・・・  88番『大窪寺』結願のお寺。お蔭で無事お参りできた喜びに感無量でジ ーンと来るものがあった。境内には長い道中使った金剛杖や、松葉杖などた くさん奉納されていた。







83番『一宮寺』で地獄の
釜音を聞く。
「ぼあ〜〜ん、ぼあ〜〜ん」
悪人は石の扉が閉まって
抜けなくなるという。
無事抜けて「ほっ!」

 3月26日いよいよお礼参りに高野山へ向かう。朝5時半集合で高野山に
ついたのが12時半頃。
 案内人の説明を聞きながらお参りする。すごい杉木立の中に有名な会社の
お墓や歴史上の人物のお墓が建ち並ぶ。

お墓というより広告塔
のようだ。
名刺受まである。
UCCのお墓

福助たびの福ちゃん


 62歳の時、自ら創った高野山で入寂された金剛峰寺と奥の院をお参りし
て、その後今夜の宿の白浜温泉に向かった。夜は親しくなったツアー仲間と
にぎやかに満願の喜びを共にした。
 あくる日は名所の三段壁や千畳敷きを見てまわり、帰途道成寺にお参りし
てあんちん清姫の絵巻物を面白おかしく、今風にストーカー物語にしてお話
され楽しんだ。
 不思議なことに17回も出かけたのに毎回よい天気で、雨風や雪で困った
ことが一度もなかった。高野山でもとてもよい天気でガイドさんに『昨日は
雪が降りました。明日は雨です。皆さんはよっぽど精進がいいのでしょう』
といわれた。
 精進のいい仲間と満開の桜をバスの中からお花見しながら「機会があれば
また回りたいネ」と名残を惜しみながら一年半のお遍路の旅に終わりを告げ
た。



道成寺 右

白浜千畳敷き 右



戻る