福間三郎 片山 洋
旅ゆけば、中華の国に茶の香り、名代なる中国、名所古跡の多いところ。
中に知られる大連と旅順とならんでその名を残す、海道一の親分は乃木大
将。一世紀前を偲びつつ厳冬の旅立ち、これ趣よろし、と言う訳で一月中
旬機上の人となった。以下、いささかにものに書きつけた。
中山広場
<あれっ?自転車が見あたらない>
大運はかっては"東洋のパリ"、今は"北海の真珠"と称されている。市街
にはロシアや日本が作った多くの建築物や市電が当時の姿のまま残されて
いる。多くの中国の都市と言えば、自転車やバイクが洪水のように走って
いたのが印象的だが大連ではほとんど見かけない。全体的に心休まる淡い
暖色で街造りがなされており、別の国に来たような錯覚に陥った。
<季節はずれの旅行は最高>
塞い寒いとの情報から、ぬいぐるみのようないでたちで行ったところ、
豈に図らんや雪はないし、そのうえ晴天つづき、些か拍子抜けした。澄み
わたる空気の中の島々と海原の濃淡ある絶景、サービスの良いホテル、渋
滞のない道路等々満足以上のものがあった。これからはこうしたツアー料
金の安い時期の穴場を狙っての各国巡りにはまりそうである。
<大連で松江同窓会?>
ツアーの同行者と中華料理に舌づつみを打ちつつ歓談し、自己紹介をし
た。"我々は島根県の松江高校の同窓生です"と言ったら、隣に着席してい
た妙齢の女性が"私の名前は島根です。隣は、姉の松江です。"
ええっ!こんな奇遇があるものかと、すっかりお互い意気投合し、旅が一
層楽しいものになった。
島根さん、松江さん姉妹と記念撮影
<遊戯商店>
中国の観光地には多くの友誼商店があり、ツァーに買い物案内が付きも
のであるが、ここでの楽しみの一つは値切り遊戯である。少し偉そうな店
員の方が色々と会話を交えながら交渉すると値引き率が大きいようだ(単
なる私の偏見==誤解なく)。
<夜景――上から見るばかりが能じゃない>
一般的には視界の広がる高いところから見る夜景が素晴らしいが、中山
広場の真中に立って四方を眺める夜景はもっと迫力がある。旧ヤマトホテ
ル等日本統治時代の建物が広場を中心に配置され、形良い落ち着いたイル
ミネーションが照らし出す雰囲気はお伽の国の風景である。
旧ヤマトホテルの夜景
<二〇三高地とは、No.203高地?>
いろいろ説があるそうだ。206mの山が砲弾の雨で203mになった
とか、乃木大将が子息の戦死を弔い、爾霊山(にれいさん)と名付けたと
か。山頂に立つと、胃袋の形をした旅順湾が一望でき、歴史に繰り返され
た日露の争奪戦が彷彿としてくる。二万人近い戦死者を出したそうだが、
確かに強固な要塞であったと思う。
旅順港 |