卯年の年頭雑感
平成23年1月
園山征男
6回目の卯年を迎え心新たなスタートを切りましたが、正直のところ次の卯年が元気に迎えられるものかと多少の不安がよぎる年齢となりました。
当ホームページのリレー隋筆・私の健康法で報告した通りの二病息災を経験し何とか元気で生きられていることには感謝の気持ちで一杯です。
前回5回目の卯年が還暦で第一の職場を定年退職し以後第二の職場で過ごした後に務めた民事調停委員を昨秋で退任し、現在は完全な毎日が日曜日を謳歌する身分となりました。
この正月、何と無く人生を振返ってみると故郷への郷愁に駆られ幼少・学生時代の楽しい思い出もさることながら社会人として第一の職場であった国民金融公庫(現日本政策金融公庫)勤務38年間が質量ともに私にとっては重要な位置を占めていることを再認識した次第です。
北海道から九州までの各地8箇所(他に本店7部署)に勤務し多種多様な中小企業の方々と触れ合い多少の貢献ができたものと自己評価しています。
その中でも支店長として勤めた10数年が特に印象に残っていますが、当時PR(パブリック・リレーション)活動の一環として新聞社等に故郷に想いを寄せて執筆したコラム・随想の一部を紹介して皆さまにご笑読頂ければ幸いです。
当時の世相・出来事を思い出させてもくれます。
報道では、元旦来郷里の山陰地方は稀に見る寒波襲来とのことですが、大雪被害を乗り越え無事に桜花の春・新年度を迎えて欲しいものです。
処で、兎は大きな耳で情報を適切にキャッチし跳ね・飛ぶ・ジャンプすると云われ縁起が良い様ですが、私はコツコツと頑張る亀をも尊敬し今年も頑張りたいと思っています。
@ 辰年の初夢(一宮支店時代・昭和63年1月1日・一宮タイムス)
中日ドラゴンズが西武ライオンズを破ってプロ野球日本一となり名古屋市広小路通りを中心に盛大な祝賀パレードを行った。
このことは単に野球ファンにとって喜ばしいのみではなく次の点を考えると非常に意義深い事である。
まず、今年は干支で云う十二支第五番目の辰年であるが、その辰というのは想像上の動物で竜と同義語であり、中国では黄河の上流にある竜門の急流を登った鯉が化して竜になるという伝説があるだけに、その辰の年に中日ドラゴンズが優勝したことは正に昇竜で縁起が良いことである。
また、中日ドラゴンズは過去3回優勝しており、その前後には必ず政権交代が行われ、日本経済は不況から好況に転じるという歴史が繰り返えされているが、昨年11月には竹下政権が誕生し、経済もドル安・円高・インフレ懸念等不透明感はあるものの景気自体は好転しつつあり、今回の優勝もそれを証明したと言え政権が安定し、好況が持続してくれることができれば、これも大変結構なことである。
島根県松江市出身の私は「ふるさと創生」を唱える竹下首相と同郷で阪神タイガースファンであり複雑な心境ではあるが、昨春当地に赴任後、中日ドラゴンズに落合効果も顕在化し始め優勝が夢ではないという現実をみるにつけ、某銀行が積算した優勝に伴う250億円に及ぶ内需拡大・地域経済効果等が期待できるとのことでもあり、竹下政権、日本経済の安定・発展と相まって是非優勝して欲しいと願っていたわけである。
A 夏休みとふるさと(川崎支店時代・平成2年10月1日・神奈川新聞)
第2次世界大戦終結45周年を迎えた今年の夏休みは、期間中(7月21日〜8月20日)におけるJR各社の特急・急行の利用客が1850万人、国内航空6社の国内線利用客が678万人と、好景気、好天気を反映していずれも過去最高を記録したり、例年になく熱戦が多かった甲子園高校野球大会では沖縄が日本に復帰した1972年生まれの選手が大半を占める沖縄代表が初の準優勝を飾ったほか、稀にみる猛暑やイラクのクウエート侵攻をも含め極めてホットな話題が多かった。
処で、夏休み特に8月はふるさとが気になる季節である。
お盆の墓参と両親・友人や郷土の山・川の安否を問う帰省がピークになり、さらには甲子園の高校野球で郷土代表の応援に熱中したりと日本全国ふるさと月間といっても過言ではない。
自分が生まれ育ったふるさとには、それぞれ思い出があり、加齢とともに郷愁の念が強くなるのは世の常・人の常と思われる。
しかし、残念ながらふるさとの山、川、田園、街並等はいつまでも昨日のままではないのが現実である。
敗戦後45年経った今日、日本は経済発展とともに異常なまでの開発が進み昨日の姿は何処にというのが実情である。とくに、生まれた侭の純粋な心で育った幼少・成長期の印象が強く心に残っているだけにふるさとは心の中で思うものであり、心の中にのみ生きているものかと残念でたまらない。
因みに、私の郷里である島根県松江市は、風光明媚な処が多く残り、人情に富み自慢ではないが県庁所在地でありながら人口も微増で推移しているほか、数年前に社会問題化したのでご記憶の方もあろうかと思うが当地の名産「しじみ」と景勝「宍道湖」を守ろうと国(農水省)の大規模干拓事業が中止となるなど郷土の保全に努力の跡が窺えることは心強い限りである。
また、結果的には比較的短命に終わり、消費税導入等で余り評判も良くなかったが、同郷の先輩である竹下元首相が提唱した「日本列島ふるさと論」は経済的側面のみでなく文化的側面をも重視した「地方独自の創意・工夫による町づくり・村づくりを促進し誇りと活力に満ちたふるさとを創り出すこと」を基本としたふるさと創生国造りは、未来を展望するといった観点からも共感すること大である。
いづれにしても、森羅万象すべての原点ともいえる自然の摂理に逆らうことなく、祖先を敬い、故郷を思い、さらには心のふるさとを大切にすることによって「うるおい」と「豊さ」をバランスさせることが可能なのだということをふるさとを考えることによって実感させられた今夏であった。
ふるさとへの賛歌をこめて、おのおのの地域が魅力ある心のふるさととして愛される様お互いが努力したいものである。
B 第二のふるさと(札幌支店時代・平成3年8月5日・読売新聞)
全国を渡り歩く私ども転勤族にとって夏休み時期はことのほか故郷が気になる季節です。
私の故郷は別称東洋のベニスとも呼ばれる島根県松江市です。
宍道湖の夕映えに代表される美しい風景や野球に没頭した青春時代が昨日の如く思い出されます。
しかし、札幌に赴任してから2カ月、雄大な自然に恵まれた風土、透明度の高い光と空気、整備された道路網、大らかで人情味の厚い道民気質などを前にして私の故郷もかすみ勝ちとなり、札幌は私にとって第二のふるさとになりそうな予感さえ致します。
寒い冬季への不安はありますが、スキーが十分に楽しめるとのこと、スポーツ好きの私にとって夏季のゴルフとともに余暇を楽しみつつ地域の皆様との交流に努めるつもりです。
このすばらしい土地で仕事ができることを思うといやがうえにも張り切らざるを得ません。
中小企業の方々への金融や情報の提供を通して地域経済の活性化に貢献することを使命とする政府系金融機関としての役割を、第二のふるさととなりそうなこの札幌で全うしたいものです。
以上、加齢とともに故郷の様子が気になる今日この頃です。
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