演目  めずらしや 江戸の雪
                      
 作 福田 春岳  

皆様 明けましておめでとうございます

よい正月をお迎えの事とお喜び申しあげます。

さて、本席は平成21年の初席であります。季節限定のお話でご機嫌をお伺いさせていただきます。初席は各真打ともども顔見世総出演であります。
従って、手前どもの 持ち時間がわずかです。おそれいりますが、ほんの 枕話だけで失礼させて頂きます。

よく天気予報を聴いていますと、もっともテレビですので天気予報番組を見ていますと 関東甲信越と云う表現をします。専門家に言わせますと真ん中に三国山脈、越後山脈、その他 高い山岳地帯が重なっており それらがまさに自然の要塞を形成しており 気象条件が対象的だそうですが その通りですなあ 関東では台風にはよくやられますが 雪の被害はさほどでもありません。冬でも温暖と言ってもいいぐらいです。

甲信越となりますと 台風の被害はさほどでもありませんが 雪の被害たるやそれはもう 大変なものでして
まあ 雪の怖さを知らないすぐ調子にのって格好を付けたがる江戸っ子がおるものでして 

"よう みんな 春、夏、秋、と日本中の観光地は大体何処も行ったなあ、越後の方は冬に大雪が降るって言うじゃないか 温泉でも入って窓から雪でも 眺めて 雪見酒と洒落こもうじゃないか それに ちょいと格好付けて 豪雪地帯を見学に行って 江戸の大福かなにかお見舞いに持って行き 雪見大福と洒落込み ちょいとシャベルなどを借りて雪をかいて ボランテアー活動の真似事でもすりゃあ 向こうの田舎者は感謝感激雨あられっていうやつだよ 越後の美味い地酒でもごちになろうじゃないか どうだい?"

"いいね いいね お前は日頃きれる寸前の蛍光灯のようにボーとしているが こうゆう話になると調子いいねえ グッド アイデア だねえ"

まことに怪しからん奴がいたもんでして 適当に話をまとめて 知り合いを介して先方に連絡をつける まあ あれこれ準備をして だんだん日にちが迫ってくる。 と あらあら こちらでは冬型の気圧配置となり だんだん朝晩冷え込んでくる。

"あれれ なんだか 寒くなって 寒気がする 風邪引いたたらしい まずいなあ神経痛の持病が再発したのか 膝がかったるいなあ"

だんだんテンションが下がってくる。いいだしっぺがこの調子だと いっしょに行くと約束した者もなんとなく いまいち 気が乗らなくなる。次の日朝おきて窓を開けると なな なんと 辺りは真っ白

"いや おどろいたねえ 雪じゃないか 白いねえ 思ったより 白いねえ去年の大晦日NHK紅白歌合戦で白組みが勝ったから御天とさんが白くしたのかねえ 物差しで測ったら3センチ6ミリあるよ 大雪だ 大雪だ 大変だあ これじゃあ 越後へは行けないねえ"

まったく だらしなく いくじなし といいましょうか ついでに 雪知らずとでも付け加えましょうか また知り合いを介して先方にキャンセルの連絡。

これを知った越後の関係者が

"江戸っ子はばかだねえ もともと雪を観光材料にするなんて 了見違いもはなはだしいねえ 雪の怖さが分からないんだよ 越後では3メートル60センチだよ 桁が違うよ 色は真っ白で炭酸ガスなんか含んでいないんだよ地球温暖化の雪じゃないんだよ  越後へ来て雪の色をみてどっちが白いか 白黒つければいいじゃないか それにさあ ちょっとでも雪かきしてくれれば 年寄りが 喜ぶよ そうすりゃあ お礼参りに越後の酒をもって行って3センチ6ミリの大雪をかいてやるよ。"

 おそまつでした 本年も宜しく御贔屓のほど 御願い申しあげます 。
                      (2009・01・01)