平成16年10月6日                           斎藤比瑳代 (5R)  小さい頃から字を書くことに劣等感を持っておりました。  結婚をし、新生活の3日目「持って帰っていいかい」と夫に言われまし た。今のようにパソコンなどない時代です。学位論文の清書を夫に代わっ てしました。でも、教授に「奥さんの字もお前と五十歩百歩だなー」と言 われたそうです。  それからずっと字がうまくなりたいと心に秘めておりました。娘が小学 校の1年生になり、京王デパートの友の会「ペン字教室」に入りました。  そこで小林龍峰先生と出会いました。先生のペン字は理論的でした。授 業中にペン字と180度違う「趣味の書の会」をやっていると話されまし た。興味を持ち、先生が主催されている「しゅはり展」を見に行きました が、その時ガーンとカルチャー・ショックを受けました。  今まで見てきた書道展では「うまいなー」、「きれいだなー」と感じ、 それで終わりでした。「しゅはり展」を見て、どんな人でどのような暮ら しをしている人が書作されたのかと帰りの電車の中で想像をふくまらせま した。それから2年位経って、お教室の友人を誘い、先生にお願いし、入 会しました。  先生は「お手本は書かないよ。お化粧したり、良い着物を着ないで素の 自分を表しなさい。」とおっしゃいました。古典のお勉強をし、技を持っ ている方はそれを捨てるのに苦労しておられます。その点、私は楽に入れ ました。また、先輩諸姉と書作について時間のたつのを忘れ話し込みまし た。帰りますと娘が暗い室で膝をかかえポツンと1人でテレビを見ていた ことも時々ありました。  書を始めて30年近く経ちましたが若気の至りで先生に造反したり、変 形性関節症のため、歩けなくなり、途中でお休みしたりしましたが、やは り「しゅはり」の書に惹かれ、この書しか私にはないとまた続けました。  小林先生、先輩諸姉に「清く、正しく生き、美しい物を見たり、聞きな さい。そして、感性を磨きなさい」と言われて来ました。私はその年代の 心のありよう、生きざまを線に表すよう努めております。病で苦しい時も 「今の心境を表しなさい」と友人に励まされ、夫と娘の理解があったから こそ趣味の「書」を長く続けて来られたと思います。  夜中、独り無心で筆を持つことはとても楽しい時間です。  夫の知人からも「お宅の年賀状はすぐ分かります。いいですね」と言っ ていただけるようになりました。これからもうまく書くのではなく、私ら しく無理をしないで楽しんで書作していこうと思っております。

今年の書展に出展した作品

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今年の書展に駆けつけて下さった野坂さんと山口さん



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